環境保全

地球温暖化や資源枯渇などの地球的課題の解決に向けて、産業構造の転換が進展しています。日本曹達グループは、事業活動による環境への影響を最小にするよう環境保全活動に取り組むとともに、新たな価値を化学の力で創造し、事業を継続的に発展させることで、サステナブルな社会の実現と企業価値の向上を目指しています。

基本的姿勢
  • 環境汚染防止、法規制の遵守などへの取り組みを継続。
  • 事業活動に伴う環境負荷の低減(地球温暖化防止、廃棄物排出量と最終埋立処分量の削減)。
  • 環境負荷の低い製品およびプロセスの開発。
  • 環境マネジメントシステムを導入。生産性を維持しながらエネルギー使用量を削減。
  • 水資源の保全。
  • 生物多様性・生態系への影響の低減。

2023年度目標と実績(KPI)

(実績達成度 ◎:90%以上 ○:90〜80% △:80〜60% ×:60%以下) 赤文字:KPI

日本曹達グループ
2023年度目標
日本曹達単体
2023年度実績
評価
1. 環境異常
1) 発生件数ゼロ
  • 未達:環境異常1件発生
    能登半島地震の影響により、高岡工場で、排水pH基準値(5.8~8.4)逸脱
×
2. エネルギー
1)エネルギー原単位(除く物流):
年1%改善(生産量ベース)
  • 未達:0.5152kL/t(前年度比6.5%増)
    (高岡工場・千葉工場での生産減によるエネルギー効率悪化)
×
2) 物流エネルギー原単位:
年1%改善(売上ベース)
  • 達成:0.0108kL/百万円(前年度比19%減)
    (二本木工場での事業構造改革に伴い、製品・原料の輸送量が大幅に減少したため)
3. 地球温暖化ガス排出削減
1)日曹グループCO2(GHG)排出量:
2025年度 20%以上削減
2030年度 30%以上削減
(対2013年度比)
  • 達成:129,786t
    (前年度比12%減、2013年度比 32.8%減)
  • 高岡工場で再生可能エネルギー由来電力の購入を開始
2)フロン漏洩トラブル撲滅
  • フロン使用機器の定期点検と整備を実施
4. 水資源の保全
水資源のモニタリングを行い、効率的な水の利用を進める
  • 効率的な水資源の利用を推進
    (規制値や協定値の遵守と効率的運用)
5. 廃棄物
1)最終埋立処分量:年3%削減
  • 達成:27t(前年度比94%減)
    (2022年度は二本木工場での事業構造改革に伴い、原材料の処分を実施)
2)ゼロエミッションの継続:2%以下
  • 達成:0.4%
3)廃プラスチック類の削減など
  • 排出抑制・再資源化など推進
6. 大気への有害物質排出
年1%削減
  • 達成:5.5t(前年度比14%削減)
7. 生物多様性
生態系への影響低減
  • 千葉工場、小田原研究所、二本木工場:継続実施中
    (詳しくは「生物多様性の保全」)
  • 各事業場:蜜蜂フレンドシップ計画への参加

環境保全

気候変動への対応

地球温暖化防止に向けた取り組みは、重要な課題です。日本曹達は、一般社団法人日本経済団体連合会が自主的に取り組んでいる「経団連カーボンニュートラル行動計画」に参加し、温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標達成に向け、省エネルギーを推進しています。

また、中長期的な目標を策定し、「グループ全体で温室効果ガス排出量を2025年度までに2013年度比20%以上削減、2030年度までに2013年度比30%以上削減」としました。

エネルギー使用量、および温室効果ガス(GHG)排出量の削減

長経年機器の高効率機器への更新、生産工程の合理化や省力化、節電対策など、エネルギーの使用に係る原単位の改善を進めています。また、環境省の「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」などを参考に、自社の活動による温室効果ガス排出(スコープ1、スコープ2)と自社の活動範囲外での間接的排出(スコープ3)について算出し、バリューチェーン全体での排出削減への取り組みを進めていきます。

サプライチェーンを通じた温室効果ガスの排出

スコープ1排出量 46,462t-CO2

スコープ2排出量 83,318t-CO2

スコープ3排出量 158,477t-CO2

スコープ3
カテゴリー
カテゴリー
別排出量
購入原料・サービス 137,886t-CO2
資本財 15,878t-CO2
スコープ1、2に含まれない燃料など 算出していません
輸送、配送(上流) 2,951t-CO2
事業から出る廃棄物 算出していません
出張 1,487t-CO2
雇用者の通勤 275t-CO2
リース資産(上流) なし
輸送、配送(下流) 算出していません
販売した製品の加工 算出していません
販売した製品の使用 算出していません
販売した製品の廃棄 算出していません
リース資産(下流) なし
フランチャイズ なし
投資 算出していません
  • ※排出原単位など、算出に必要な数値はすべて環境省の「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等のための排出原単位データベース(ver.3.0)」を使用した。

森林によるCO2の吸収

気候変動を抑制するうえで、森林はCO2の吸収源として重要な存在です。日曹商事(株)は、天竜川支流の気田川源流部に、約56ha(東京ドーム12個分)の土地を所有しており、造林ならびに地上権設定契約に基づき、スギ・ヒノキの人工林を静岡県が造成し管理しています。この森林は水源涵養保安林に指定されているほか、持続可能な森林経営の証しであるFSC森林認証を取得しており、健全な森林の育成に寄与しています。

  • ※FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)は、責任ある森林管理を世界に普及させることを目的に設立された国際的な非営利団体です。FSC森林認証は森林保全のために適切な管理体制が敷かれている森林として、独立した第三者機関より認定されたことを表します。

再生可能エネルギーの活用

二本木工場では、河川から工業用水を取水し、返却する際の落差を利用して小水力発電を行っています。この電力は1940年の設置以来、工場の生産活動に有効に利用し、現在に至っています。今後も、再生可能エネルギーを安定的に生み出す、この発電所を大切に守っていきます。
高岡工場では、GHG排出量削減に向け、再生可能エネルギー由来の電力の購入を開始しました。2023年度は工場内使用電力の10%相当分を再生可能エネルギー由来の電力に置き換え、2024年度以降も比率を高めていく予定です。
千葉工場では、2024年度下期の竣工を目指し、工場敷地内に太陽光パネルを設置する設備投資計画を進めています。今後の太陽光発電システムの導入により、CO2排出量を年間約1,140t削減することが可能となります。
本社が入居するJPタワーは2024年1月より、東京電力エナジーパートナー株式会社が提供する「グリーンベーシックプラン」を導入しました。これにより、当該施設での電気使用によるCO2排出量が実質ゼロとなります。
日本曹達は、他の事業場においても再生可能エネルギーの導入を検討し、脱炭素化をさらに加速させていきます。

  • ※グリーンベーシックプラン:東京電力エナジーパートナー株式会社が提供する、実質的にCO2排出量がゼロとなる太陽光・風力・水力その他の再生可能エネルギー由来の電力を供給するプラン
二本木工場の小水力発電

二本木工場の小水力発電

千葉工場の太陽光パネル

千葉工場の太陽光パネル

物流部門における省エネルギーの推進

エコレールマーク

日本曹達は、物流部門においてエネルギー使用に係る原単位の低減に取り組んでいます。従来、省エネルギー法の定める特定荷主として、毎年、経済産業省へ定期報告書および中長期計画書を届け出ていました。しかし、二本木工場での構造改革に伴いカリ製品などの製造販売を終了したことから、年間の貨物輸送量が特定荷主の基準である3,000万トンキロを大きく下回ることとなりました。その結果、特定荷主指定の取消を行い、経済産業省への定期的な報告が不要となりました。このように状況は変化しましたが、当社はモーダルシフト、輸送容器の大型化による輸送回数の低減、物流経路の変更などの対策を継続して実施し、物流面での効率化と環境負荷低減を引き続き図っていきます。なお、当社のモーダルシフトへの取り組みは高く評価され、2013年に「エコレールマーク取組企業」として認定されています。

資源の有効活用・産業廃棄物の削減

一般社団法人日本経済団体連合会が取り組んでいる「循環型社会形成自主行動計画」に参加し、産業廃棄物最終埋立処分量の削減目標達成に向けて、産業廃棄物の削減を推進しています。

産業廃棄物の適正管理と産業廃棄物最終埋立処分量の削減

循環型社会の形成を目指した取り組みの一つとして、長期的に産業廃棄物の排出量そのものの削減を行う一方、産業廃棄物のリサイクルなどを進めることで、産業廃棄物最終埋立処分量を削減しています。

ゼロエミッション

日本曹達は、2023年度にゼロエミッションを達成しました。今後も、ゼロエミッションの継続に向けて、産業廃棄物の削減を推進していきます。

  • ※産業廃棄物移動量に対する産業廃棄物最終埋立処分量の比率が小さい状態。当社においては、埋立処分の比率が2%以下を「ゼロエミッション」と定義しています。

ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物

2016年に改正された「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)」に基づいて、日本曹達ではPCBを含有するコンデンサ、変圧器、水銀灯安定器などを各事業場で適正に保管・管理し、順次適正に処理を行っています。

大気・水質の保全

大気汚染防止法、水質汚濁防止法などの最新の法規制動向を踏まえながら、PRTR制度対象物質排出量の削減、河川などへの有害物質排出量の削減など、さまざまな施策を実施し、大気と水質の保全に取り組んでいます。

化学物質排出把握管理促進法(PRTR制度)対象物質排出量の削減

化学物質排出把握管理促進法の二本柱のうちの一つである、PRTR制度で規定されている第一種指定化学物質の排出削減に努めています。

有害大気汚染物質排出量の削減

大気汚染防止法に基づく優先取り組み物質で、一般社団法人日本化学工業協会(JCIA)が指定する自主管理12物質のうち、当社が現在扱っている6物質(クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、エチレンオキシド、1,3-ブタジエン、ベンゼン)について、排出削減に注力しています。

大気汚染物質排出量の削減

日本曹達では、大気汚染防止法により固定発生源からの排出が規制されている硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、ばいじんについて、排出削減に努めています。

フロン排出抑制法への対応

フロン排出抑制法に対応するために、各事業場にて、専門知識を有する者による定期点検ならびに管理責任者による簡易点検、漏洩防止策などを順次実施しています。

河川などへの有害物質排出量の削減

日本曹達は、法規制値、および地元自治体との協定値を遵守するために、社内でさらに厳しい自主管理値を設け、汚染物質の監視、排水処理設備による浄化の徹底を図っています。

生物多様性の保全

日本曹達では生産拠点がある地域を中心に、環境負荷の低減、水資源の有効利用や大気・水質・土壌などの汚染防止対策に取り組んできました。近年では、生物多様性保全を重点課題に加え、各事業場で実施可能な活動を行っています。

酒匂川水系メダカの飼育(リサーチ&イノベーションセンター(小田原))

神奈川県小田原市では環境省により絶滅危惧Ⅱ類に指定されているメダカの生息地と遺伝子を守り、次世代へと引き継いでいくために、1999年から「メダカのお父さん、お母さん里親制度」を実施し、保護活動を進めています。

酒匂川水系メダカの飼育

酒匂川水系メダカの飼育

酒匂川水系メダカの飼育

最重要保護生物ヒメコマツの保護支援(千葉工場)

千葉工場では、千葉県の絶滅危惧種であるヒメコマツを2016年に譲り受け、ヒメコマツサポーターを継続しています。

ヒメコマツ 石板
ヒメコマツ 2016年11月とヒメコマツ 2024年8月

クロップライフジャパン「蜜蜂フレンドシップ計画」に参加

クロップライフジャパンでは、ビジョン活動の一環として、会員各社の関連事業所・所有地などの中で利用可能なスペースに訪花昆虫の好む植物を栽培する「蜜蜂フレンドシップ計画」を2020年度から開始しています。

日本曹達もその計画に賛同し、各事業場においてさまざまな工夫を施し取り組んでいます。

  • ※2024年5月にJCPA農薬工業会より改称
蜜蜂フレンドシップ計画
蜜蜂フレンドシップ計画
蜜蜂フレンドシップ計画
蜜蜂フレンドシップ計画

「日本曹達グループの森」を通じた環境保全活動への取り組み

創立100周年を機に、SDGs達成への貢献として緑と水源を守るための取り組みを始めています。日本曹達発祥の地である新潟県上越市の「上越市くわどり市民の森」内に「日本曹達グループの森」を設け、生物多様性のある森づくりと環境保全に貢献するべく、公益社団法人国土緑化推進機構への寄付を継続しています。

「日本曹達グループの森」づくりの整備計画図面

「日本曹達グループの森」づくりの整備計画図面

すが池の水張り状況(2023年7月18日)

すが池の水張り状況(2023年7月18日)

今後に向けて

今後も引き続き、省エネルギー、省資源、地球温暖化ガス排出量削減、水資源の保全、生物多様性の保全、生態系への影響の低減に努め、事業活動における環境への影響を最小にするよう、環境保全活動を継続的に改善して行っていきます。


2024年度目標
  1. 1.環境異常:発生件数ゼロ
  1. 2.エネルギー
    1. 2-1.エネルギー原単位(除く物流):年1%改善(生産量ベース)
    2. 2-2.物流エネルギー原単位:年1%改善(売上ベース)
  1. 3.地球温暖化ガス排出削減
    • 日本曹達グループCO2(GHG)排出量:
      2025年度 20%以上削減、2030年度 30%以上削減(対2013年度比)
  1. 4.水資源の保全
    • 水資源のモニタリングを行い、効率的な水の利用を進める
  1. 5.廃棄物
    1. 5-1.最終埋立処分量:年3%削減
    2. 5-2.ゼロエミッションの継続:2%以下
    3. 5-3.廃プラスチック類の削減等
  1. 6.大気への有害物質排出:年1%削減
  1. 7.生物多様性、生態系への影響の低減