日本ではグリホサート剤が効きづらい、オヒシバ(北関東)、ネズミムギ(静岡)が散見されています。
オヒシバ(雄日芝、学名: Eleusine indica)は、イネ科オヒシバ属の雑草です。
本州以南の日なたに生育する背の低い一年生草本で、道端でもよく見かけます。
オヒシバの生育地は非農耕地および多種多様な樹園地、作物畑、野菜畑です。
雑草として最も問題になるのは野菜畑です。
マレーシアでは3年間に 20回近くグリホサートが散布され、約10倍の薬量でも枯れないグリホサート抵抗性個体が発生しました(2000年)。
他花受粉し、種子生産量が多く、現地では年4回世代交代するため除草剤抵抗性を獲得したものと考えられています。
ネズミムギ(Lolium multiflorum Lam.)は、単子葉植物イネ科ドクムギ属の普通にみられる雑草です。
牧草としてイタリアンライグラス(Italian ryegrass)という名称で栽培されていましたが、全国各地の道端等で野生化し、水田畦畔や小麦畑に侵入しています。
防除にグリホサートが多用され、他花受粉し、種子生産量が多いため除草剤抵抗性を獲得したものと考えられています。
グリホサートは1974年から非選択性茎葉処理除草剤として世界中で広く使用されています。
ベンゼン環のついた(芳香族)アミノ酸を合成する酵素
※1を阻害することにより雑草を枯殺します。
※1 EPSPS (5-enolypyruvylshikimate-3-phosphate synthase, EC 2.5.1.19)
補足
グリホサート耐性メカニズムは集団内および個体内で複数組み合わされることが多く知られています。
上記では特にEPSPSのPro106突然変異が強い抵抗性を示すと報告されています。
T102I とP106S の変異が同時に起こることはTIPS と呼ばれ,グリホサート1080 g/10 a 処理でも枯れない強力な抵抗性を得るとの報告があります。
(冨永 農業および園芸 2015年 90巻1号 P.126-133)
採取された1地点でTIPS変異の高耐性を示す個体群があったが、他3地点では酵素に変異はみられず別なメカニズムと推定されました。
また、集団中で感受性個体と非感受性個体が混在する例もみられました。
感受性個体は27g/10aで枯死したが、TIPS変異の個体は1320g/10aでも完全には枯死しませんでした。
(丹野 雑草研究 2021年 66巻1号 P11-15)
無処理区
ナブ乳剤 150ml
ナブ乳剤 200ml
A剤 250ml
A剤 500ml
A剤:グリホサートを有効成分に含む剤
(社内試験 散布 21日後)
グリホサート剤の抵抗性雑草を見つけた場合は種子を形成する前に、直ちにナブ乳剤を散布しましょう。
補足
放置すると周辺に種子が拡散する可能性があるので、根までしっかり枯れ再生することの少ないナブ乳剤で防除することをお勧めします。
抵抗性と感受性の個体が混じっている場合もあるので、かけむらと見間違うことのないように適切に判断して防除しましょう。
ナブ乳剤はオヒシバの3-5葉期で散布するのが効果的です。開花している場合は散布後数日してから刈り取って処分する事をお勧めします。
ナブ乳剤は1985年に日本曹達が発明開発したイネ科雑草用茎葉処理除草剤です。
イネ科雑草の脂肪酸の生合成※2を阻害することにより枯殺します。
※2 アセチルCoAカルボキシラーゼ(acetyl-CoA carboxylase、ACC、ECC 6.4.1.2)
イネ科植物は葉緑体に真核由来のACCのみを持っており、ナブ乳剤の有効成分セトキシジムはこの酵素を特異的に阻害します。
イネ科以外の植物では葉緑体に原核由来の酵素のみを持っていて、セトキシジムはこの酵素を全く阻害しないため作用しません。
(小西等 植物の化学調節 1996年 31巻 2号 p.134-142)
雑草が大きくなると養分を奪って作物の生育に影響するので早めに散布しましょう。