雑草発生前に使用する
フィールドスターP乳剤は、雑草発生後の散布では十分な除草効果が発揮できませんので、必ず雑草発生前に使うようにしてください。
キャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなど畑作除草のきら星
フィールドスターはBASFの登録商標です。
フィールドスターP乳剤は、酸アミド系の除草成分であるジメテナミドPを64.0%含有した土壌処理型の除草剤です。
科名 | 雑草名 | 効果 | |
---|---|---|---|
一年生 イネ科雑草 |
イネ科 | ノビエ | ◎ |
メヒシバ | ◎ | ||
オヒシバ | ◎ | ||
エノコログサ | ◎ | ||
スズメノテッポウ | ◎ | ||
スズメノカタビラ | ◎ | ||
一年生 広葉雑草 |
カヤツリグサ科 | カヤツリグサ | ◎ |
タデ科 | タデ類 | 〇~△ | |
ナデシコ科 | ハコベ | 〇~△ | |
スベリヒユ科 | スベリヒユ | ◎ |
科名 | 雑草名 | 効果 | |
---|---|---|---|
一年生 広葉雑草 |
キク科 | ノボロギク | ◎ |
ハキダメギクメ | ◎~〇 | ||
タカサブロウ | 〇~△ | ||
アブラナ科 | ナズナ | 〇~△ | |
スカシタゴボウ | △ | ||
オオバコ科 | オオイヌノフグリ | ◎~〇 | |
アカザ科 | シロザ | △~× | |
ヒユ科 | イヌビユ | ◎ | |
ツユクサ科 | ツユクサ | 〇~△ | |
アオイ科 | イチビ | △~× |
※シロザ、タデ類、アブラナ科などの一部広葉雑草には効果が劣りますので、これらの広葉雑草が多発する圃場では広葉雑草に有効な除草剤との組み合わせで使用してください。
フィールドスターPは、既に生えている雑草を枯らす除草剤とは異なり、雑草が発生する前に土壌に散布する事で土壌表面に除草成分の層を作ります。この「層」を、一般的に「除草剤処理層」と言います。
フィールドスターPの処理層は、土壌の種類により異なりますが地表面から2~3cmに形成されます。一般的に一年生の雑草は、地表面から2~3cmで発生するものがほとんどです。この部分の雑草の発生を抑制できれば雑草防除ができます。
処理層と雑草の発芽する層が重なることで高い除草効果を発揮することができます。
土の中にある種が発芽すると、雑草の芽が出てきます。
「発芽したばかりの雑草の幼芽部と幼根部が処理層に触れる事で枯れる」というのが土壌処理型除草剤の特徴です。
一年生の雑草がなぜ地表面から2~3cmから発生するかというとこの部分で種の発芽に必要な光、水、酸素などの必要な条件が満たされるためです。
種は、光、水、酸素などの条件が整わないと発芽することがでず休眠状態になり土壌中で寝たままになります。
条件が揃わないと数年から数十年にわたり寝たままで生存が可能であり、埋土種子として土中に残ります。
そのため耕うんするたび毎回土壌処理剤の散布が必要になります。
特にキャベツやブロッコリーに対してフィールドスターP乳剤を効果的に使うためのポイントについて
フィールドスターP乳剤は、雑草発生後の散布では十分な除草効果が発揮できませんので、必ず雑草発生前に使うようにしてください。
苗が活着すると、作物の根が土壌の水分や養分をしっかり吸収できるようになるので、定植時と比べて葉の萎れが回復してきます。作物への悪影響をさけるため、このタイミングでの散布がおすすめです。天候条件にもよりますが、目安としては定植3~5日程度経ってからの散布がおすすめです。
散布直後の降雨は薬害のおそれがあるので、降雨が予想される時には散布をさけましょう。
キャベツでは、生育抑制や縮葉(萎縮したような状態)といった薬害症状が出ることがあります。
定植前後2日以内に多雨が予想される場合は散布しないようにしてください。
また、直射日光が強い炎天下等での使用もおすすめできません。乳剤という性質上、葉焼け等のリスクが高まります(最悪の場合は枯死します)。
ブロッコリーに対してはキャベツより薬害が出にくい傾向にありますが、高温時の散布では薬害を生じるおそれが有りますので、高温時での使用はさけるようにしてください。
高温時の散布をさけるというのは、安全作業の面からも農薬散布の基本です。
夏場の散布は、明け方くらいの涼しい時間帯か、夕方遅めの気温が下がってきたタイミングで行うことを推奨します。
細かく砕土する事でフィールドスターP乳剤の綺麗な処理層を作る事ができます。
フィールドスターP乳剤は、土壌中の移行性が比較的大きいので砂土での使用はさけましょう。また、砂質がかった土壌や礫(つぶて)が多い圃場では定植した作物の根まで処理層が到達する根当たりのリスクが有るため、低めの薬量で使用しましょう。
一方、土壌の色と腐植(=有機物)含量との関係は、黒色が強くなるほど腐植含量が高く、除草剤が効きにくく、薬害が出ない条件になります。逆に暗灰色や暗褐色の土壌では除草剤が効きやすく、薬害が出やすい条件になります。そのため黒色土壌では高薬量を使用、それ以外では低薬量での使用をおすすめいたします。
散布したい圃場の土を手に持って軽く握ってみてください。手のひらで軽く握ると塊ができ、簡単に崩せるくらいの水分状態がベストです。ビチャビチャした状態は薬害リスクが高くなりますので、土壌水分が多すぎる場合は散布ベストな状況になるまで散布は控えてください。
フィールドスターP乳剤を散布後、過度の灌水や頻繁な灌水はしないでください。処理層が壊れる原因となります。処理層が壊れてしまうと雑草の出芽を止める事が難しくなります(効果不足を招く)。定植前後2日以上はなるべく灌水を控えるようにしてください。また、散布直後の灌水は、処理層が土中に沈み込んでしまい、定植した作物の根に接触する(根あたりする)ことにより、除草成分を吸い上げてしまい薬害の一因にもなります。
フィールドスターP乳剤は、誤ってハクサイにかけてしまうと生育遅延を起こします。また、キク科雑草に対して高い除草活性がありますので、レタスなどのキク科作物にはドリフトでも大きな影響があります。近隣でこれらの作物を作付している場合は注意してください。
ドリフト防止のためにも、キリナシ噴口など除草剤専用ノズルのご使用がおすすめです。ただし、除草剤用ノズルでもランドアップノズルやバスタノズルなど雑草茎葉散布用のご使用はさけてください。
また、背負いの動噴より均一に散布できるブームスプレーヤーのご利用がおすすめです。その際は、薬害のおそれがあるので重複散布をさけてください。
降雨が無い状況が続いたり酷暑などによって圃場水分が少ない場合にフィールドスターP乳剤を散布すると、除草剤の処理層を作る事はできますが、適度な土壌水分がある状態と比べると除草剤の処理層は表層部分に薄く形成される形となります(薄っぺらな処理層となります)。
土壌が乾きすぎていると土壌のヒビ割れや強風等によって土壌表面が吹き飛ばされてしまう事があるため、フィールドスターP乳剤の効果が不安定になるおそれがあります。
カラカラな土壌条件よりは適度に水分が有った方が良いので、過度に乾燥している場合は散水してからフィールドスターP乳剤を使うといった事もおすすめです。
ただしその場合、土壌水分が多すぎると薬害リスクが高くなりますので、土を手に取ってみて水分量を見るようにしてください。
作物によっては生育の遅れは出るものの、有効成分の効力切れと共に回復する場合も有ります。
ただし、初期生育阻害がひどいとその後の生育にも影響がのこる場合があります。例えばキャベツではうまく結球しなかったり、十分肥大しないといった薬害のおそれがあります。ですので、苗に余裕が有り、定植のタイミングが間に合うようであれば、現在の畝の植穴を少し大きめに掘り起こして植え直すという対応をしてください。
ただし同じ圃場の畝に植え直す場合は、植え直した株元の付近の除草剤処理層は崩れた状態になるため、株元付近だけ雑草が生えやすくなります。
後々雑草が生えたら抜き取る等の対応が必要となります。
よくある失敗例としては、フィールドスターP乳剤を使った散布器具を洗わずに次の農薬散布をしてしまう場合です。
薬剤が残っていないから大丈夫だろうという安易な判断でタンクやホースを十分洗わずに次の薬剤散布に使ってしまうと、ドリフトした時と同じような薬害症状が生じます。
大抵の場合は除草剤用の散布器具と殺虫殺菌剤用の散布器具は使い分けている方が多いと思いますが、そうでない場合は特に注意してください。
フィールドスターP乳剤に限らず、除草剤を使ったタンクやホースは最低3回はしっかり洗っておくのが無難です。