SD法によるPCB無害化への取り組み




PCBとは
ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、化学的に安定、絶縁性、不燃性という特性から、トランスやコンデンサーなどの絶縁油、熱交換器の熱媒体、感圧紙などに使用されていました。しかし、カネミ油症事件をきっかけにPCBの毒性が問題となり、政府の行政指導のもと、PCBの製造中止、回収の指示(保管の義務)が決定。その結果、PCBを使用していた各企業は、処理できないまま現在も保管しています。最近ではコンデンサーなどの容器そのものが紛失していることがわかり、大きな社会問題となっています。日本曹達では、この人類の負の遺産を処理すべく、SD法(Sodium Dispersion、金属ナトリウム分散体法)を開発いたしました。



開発の経緯
当社では、昭和47年に金属ナトリウムを用いてPCBの脱塩素を試みたことがあります。当時すでに燃焼法が確立されていたため、研究を中断していましたが、平成6年から環境事業の一部として研究を再開しました。
その後、基礎実験、実証試験を積み重ねながら現在に至っています。



SD法の原理
反応条件 170℃前後で溶媒(絶縁油)中で反応。
反応初期 2個の金属ナトリウム(Na)原子の一つがPCBの塩素原子と脱塩素化反応する結果、食塩が生成します。一方、ビフェニル側では塩素原子の代わりにもう一つのNaが結合します。
重合化反応 ビフェニルに結合したNaは、反応性が高く、ほかのPCBの塩素と反応し、食塩が生成すると共にビフェニル同士が結合します。この結果PCBは、高分子重合物に無害化されます。
システムの概要 PCB分解槽に反応溶媒とSD薬剤を入れ、PCB液を滴下します。170℃で、約2時間反応させます。サンプリング、工程分析を行い、PCBが無害化されたことを確認後、後処理槽へ送液し、過剰分のNaを水で分解します。その後、分離機で溶媒と固形粉末(固形状廃油)とを分離します。回収した溶媒は、再度反応溶媒として再利用します。



SD法の特徴
(1) 反応温度が低く、ppbレベルまでほぼ完璧な処理が可能です。
(2) 薬剤はSDのみの使用で生成物の組成が明確です。
(3) 反応原理がシンプルであるため、処理コストが低くすみます。
(4) バッチ処理のため、PCBが無害化されたことを確認できます。
(5) PCBの無害化生成物を固形物として取り出すため、溶媒を再利用できます。
(6) SD法の核となる金属ナトリウムは、当社が年間数千トン製造しており、現在でも化学反応用の試薬として広く利用されています。
当社は、独自のノウハウによりナトリウムを加工してオイル中で数ミクロンの微粒子とした金属ナトリウム分散体を製造しています。さらに特殊なオイル中で分散することにより、金属ナトリウムの高い反応性を維持しながらPCBの無害化に特化させた薬剤SDを開発することが出来ました。



処理実績
当社は、旧3省庁(環境庁、通産省、厚生省)から平成10年度に、実用化可能な技術として評価を得ました。また、新潟県から平成11年末に中間処理施設の設置許可を得て、当社二本木工場にて保管されていたコンデンサー中のPCB約400kgを下記プラントで全く問題なく処理いたしました。

01 02 設備全景(左)
当社二本木工場
新潟中郷村
平成11年12月認可

作業前に計器類により運転状況を再確認する。(右)

03 04 反応槽の覗き窓から見たところで中央の棒が撹拌羽根のシャフト(左)

固形粉末と油を遠心分離機によって分離する。(右)

さらに富山県から平成13年7月に中間処理施設の設置許可を得て、当社高岡工場にて保管されていたコンデンサー中のPCB約1,900kgを下記プラントで処理を行います。

設備全景(1/10模型) 設備全景(1/10模型)
当社高岡工場
富山県高岡市
平成13年7月認可
反応槽 熱媒設備 反応槽(左)
PCBを1回で40kg分解する能力をもつ。

熱媒設備(右)
反応槽を加温あるいは冷却するための装置。
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